金利上昇局面における住宅ローン考
金利上昇がやけに急激だと感じる今日、昨年の今頃はどうだったか?と考えると
「金利は上げてみたけどまだまだ低金利」であったものが
「一定の金利コストが発生する環境」へと大きく変化してきました。
そうなると、私もその一人ですが「住宅ローンの組み方はどうしたらよいのだろう?」とお考えになるでしょう。
そうした皆様の一助となることを願い、過去30年における住宅ローンからシフトすることを踏まえながら、これからの時代に求められる新たな考え方について、私見を交えながら記してみます。
―「借りられる額」ではなく「金利が上がっても返せる額」で考える―
金利上昇局面では、住宅ローンの考え方そのものを見直す必要があります。
これまでの低金利時代には、「変動金利を選択し、低い金利で多く借りる」という考え方が合理的な場合もありました。しかし、日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後、政策金利の引上げが行われています。2026年9月11日時点で、日本銀行の金融市場調節方針は無担保コールレートを「1.0%程度」としています。
国土交通省も、2026年3月に住宅ローンの金利リスクに関するリーフレットを公表し、日本の住宅ローン利用者の約8割が変動金利型を利用していること、金利上昇に伴う返済負担への注意を呼びかけています。
1.これからの住宅ローンは「金利上昇リスク」を前提に考える
住宅ローンを検討する際、最も重要なのは、
「現在の金利で返済できるか」ではなく、「将来、金利が上昇しても返済できるか」
という視点です。
例えば、変動金利で住宅ローンを組んだ場合、当初の返済額が低く抑えられる可能性があります。
しかし、将来的に金利が上昇すれば、利息負担は増加します。
特に、
・借入額が大きい
・返済期間が長い
・頭金が少ない
・共働きによるペアローン
・家計に余裕が少ない
といった場合には、金利上昇の影響を受けやすくなります。
2.変動金利型住宅ローンのメリットとリスク
変動金利型住宅ローンの最大のメリットは、一般的に固定金利型よりも当初の金利が低いことです。
そのため、
「毎月の返済額を抑えたい」
という人にとっては魅力的な選択肢です。
一方で、金利が上昇すれば、将来的な返済負担が増える可能性があります。
日本銀行も、政策金利の変化が市場金利連動型の貸出金利に影響し、その後、変動金利型住宅ローンの金利にも波及していく仕組みを説明しています。
ただし注意したい点
「日銀が利上げをしたら、翌月から住宅ローン返済額が急増する」というわけではありません。
多くの住宅ローンでは、
・金利の見直し時期
・返済額の見直し時期
が異なります。
また、以前にも書きましたが一部の変動金利型住宅ローンには、いわゆる「5年ルール」や「125%ルール」などが設けられています。
しかし、これは金利上昇による負担そのものがなくなる制度ではありません。
返済額の上昇が先送りされることで、元金の減少が遅れる可能性などもあります。
したがって、
「毎月返済額がすぐに上がらないから安心」
とは一概に言えません。
3.固定金利は「保険」という考え方
固定金利型住宅ローンの特徴は、契約時点で将来の金利上昇リスクをある程度固定できることです。
一般的には変動金利よりも当初金利が高くなる傾向がありますが、その代わり、
将来の返済計画を立てやすい
というメリットがあります。
特に、
・返済期間が長い人
・借入額が大きい人
・教育費など将来の支出が大きい人
・収入の増加を見込みにくい人
にとっては、固定金利の安心感は大きいと考えられます。
固定金利は単純に「高いローン」ではなく、
将来の金利上昇リスクを回避するための保険料
という考え方もできます。
住宅金融支援機構では、金利が高いためあまり見向きされなかった『フラット35(固定金利)』などの金利情報を公表しています。
4.変動金利か固定金利かは「損得」だけで決めない
住宅ローンでは、
「変動金利と固定金利のどちらが得か?」
という議論がよくあります。
しかし、将来の金利を正確に予測することはできません。
そのため、本来は、
「どちらが得か」
ではなく、
「どこまで金利上昇リスクを負担できるか」
で判断することが重要です。
例えば、金利が上昇しても、
預貯金に余裕がある
収入が安定している
繰上返済できる資金がある
借入額が年収に対して過大ではない
という場合には、変動金利を選択する合理性があります。
一方、
住宅ローンの返済が家計ギリギリ
・今後、教育費が増える
・老後資金の準備も必要
・収入の増加が期待できない
という場合には、低い当初金利だけで変動金利を選択することは慎重に考えるべきでしょう。
5.「いくら借りられるか」ではなく「いくらなら安全か」
住宅購入では、金融機関から借りられる金額を基準に予算を決めるケースがあります。
しかし、
金融機関が貸してくれる金額=安全に返済できる金額
ではありません。
住宅ローンの返済には、
・金利上昇
・固定資産税・都市計画税
・修繕費
・マンションの管理費・修繕積立金
・教育費
・自動車費用
・老後資金
なども影響します。
住宅ローンだけを見て返済計画を立てるのではなく、家計全体のキャッシュフローで考える必要があります。
6.これからは「金利ストレステスト」が必要
住宅ローンを借りる際には、現在の金利だけでなく、複数の金利条件で返済額を確認することをおすすめします。
例えば、
現在の金利
金利+0.5%
金利+1.0%
金利+2.0%
といった条件でシミュレーション(ストレスとかけてみる)します。
そのうえで、
金利が1%上昇しても生活できるか?
金利が2%上昇した場合、家計はどうなるか?
を確認します。
ここで重要なのは、「返済できるか」だけではありません。
教育費や老後資金を確保したうえで返済できるかを考える必要があります。
7.不動産価格の上昇と住宅ローン金利の関係
近年は住宅価格そのものも上昇しています。
住宅価格が高くなれば、当然ながら住宅ローンの借入額も増加します。
例えば、以前であれば3,000万円の住宅ローンで済んだものが、住宅価格の上昇によって5,000万円、6,000万円の借入になることもあります。
借入額が大きくなれば、わずかな金利上昇でも家計への影響は大きくなります。
つまり、
住宅価格の上昇 × 金利の上昇
という二重の負担を考えなければならない時代になっています。
国土交通省も、住宅価格の上昇や超長期ローン、ペアローンの増加を背景として、住宅ローンの金利リスクへの理解が重要になっているとしています。
8.これから住宅ローンを組む人への考え方
金利上昇局面では、次の順番で考えることが重要です。
① 住宅購入予算を決める
「欲しい住宅の価格」ではなく、「無理なく返済できる価格」から考えます。
② 頭金・自己資金を確認する
ただし、手元資金をすべて頭金に入れるのではなく、生活防衛資金を確保することも重要です。
③ 金利上昇を想定する
現在の金利だけで返済計画を立てないことです。
④ 変動・固定のリスクを理解する
単純な金利の高低だけで判断しません。
⑤ 将来のライフプランを確認する
教育費、転職、退職、老後なども考慮します。
最後に
金利上昇局面における住宅ローンでは、
「一番低い金利を選ぶ」ことが正解とは限りません。
重要なのは、
自分自身の家計が、どこまで金利上昇に耐えられるかを把握すること
です。
変動金利には低金利のメリットがあります。
一方で、金利上昇リスクがあります。
固定金利には当初負担が高くなる可能性があります。
一方で、将来の返済計画を立てやすいというメリットがあります。
したがって、住宅ローン選びでは、
「どちらが得か」ではなく、
「どちらなら将来にわたって安心して返済できるか」
という視点が、これまで以上に重要になってくるでしょう。
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